家族とBMWが紡ぐストーリー ― 台湾「Night Shift」Ericインタビュー

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台湾の自動車・バイクメディア「Night Shift」の創設者兼編集者であるEric(エリック)に、彼のクルマへの情熱の原点について話を聞いた。インタビューでは、父親のBMWへの愛情を中心に、家族とクルマの深い結びつき、そしてE30E34E36という3台のBMWが刻んだストーリーが語られた。

父の情熱から始まったE30

エリックの父親がBMWに魅せられたのは数十年前に遡る。1990年代後半、台湾でまだ手が届く存在だったE30を、彼は夢の一台へと仕上げた。当時、直列6気筒モデルは稀少で、318iと320iの価格差は大きかったが、幸運にも叔父から1985年式320iを譲り受けることができた。

そのクルマは父の情熱のキャンバスとなった。M20エンジンはアルピナB3 2.7へと換装され、M-Techシートやスポイラー、Bosch製のダークスタイルヘッドライト、MHWテールランプ、アルピナホイールやステアリング、Racing Dynamics製スタビライザー、Hartgeタワーバー、さらにはアルピナ製クロックまで、当時の雰囲気を色濃く反映したチューニングが施された。外観は力強く、峠道ではまさに生き物のように走った。


家族との時間を支えたE34

やがて家族が増えると、コンパクトなE30は実用性に限界を見せ始めた。そこで登場したのがE34である。4人が快適に過ごせる広さと走りの楽しさを両立し、父親が40代後半に差し掛かった時期に家族のカーライフを支えた。

E34はE30のような徹底改造ではなく、成熟した大人の選択が表れていた。外観はM5風の佇まいを持ちながら、エンジンには鍛造M54B30のピストンやクランク、コンロッドを組み込み、M50を約220馬力へと引き上げた。現代の車に引けを取らないパフォーマンスを備えながらも、信頼性と日常性を確保した一台であった。外から見れば控えめだが、知る人には特別と分かる存在だった。


叔父と共に仕上げたE36

E30の影響を受けたのは父だけではない。叔父もその情熱に刺激され、自身のE36 325iクーペを本格的なM3仕様へと仕立てることを決意した。そのプロジェクトの中心にいたのも父だった。

ボディキットやスポイラー、インテリア、ホイールまでM3仕様を導入し、エンジンにはM50B28の内部パーツを移植。さらにハイカムとKelleners Sport製ECUを組み込み、真のM3に迫る走行性能を実現した。家族の協力で生まれたこのE36は、単なるクルマ以上の価値を持つものとなった。


世代を超えて受け継がれるBMW

現在、E30は手元にないが、エリックはE34とE36を大切に引き継いでいる。これらのBMWは単なる「古いクルマ」ではなく、幼少期の記憶を刻み、父から子へと受け継がれる情熱の証である。

「他の人にはただの古いクルマに見えるかもしれない。でも、僕にとっては一生の情熱の原点なんです」とエリックは語る。BMWが織りなす家族の物語は、今も彼の中で走り続けている。