ゴードン・マレー S1 LM が約32億円で落札、新車オークション史上最高額を樹立

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ゴードン・マレー・スペシャル・ビークルズ(GMSV)による最新作「S1 LM」が、RMサザビーズのラスベガス・オークションにて2,063万ドル(約32億円)で落札され、新車としては史上最高額の記録を更新した。


S1 LMが塗り替えた、新車オークションの歴史

2025年11月21日、Formula 1 ラスベガスGPの熱気とともに開催されたamfARガラにおいて、5台のみ生産されるうちのシャシー#1のS1 LMは世界中の入札者の注目を一身に集めた。競争的な入札合戦の末、ハンマーは2,063万ドルで落ち、チャリティ目的を除く新車オークション史上最高額が更新された。

落札者には車両そのものに加え、ゴードン・マレー本人とのパーソナル・スペックセッションという極めて稀有な特典が付属する。オーナーは、まるで1990年代にタイムスリップしたかのように、マレー教授とともに自らの理想を反映した仕様を創造することができる。


S1 LM:伝説の再創造と、究極のアナログ体験

S1 LMは、マクラーレンF1 GTRが1995年にル・マンで達成した伝説的な勝利の30周年を記念して誕生した。これはゴードン・マレー・スペシャル・ビークルズによる最初の、そして最も重要なプロジェクトであり、崇高なるF1 LMへの現代的なオマージュとして、最新の素材と最新の技術、そして純粋な使命をもって再創造された。

自然吸気V12の新境地

  • コスワースと共同開発した4.3リッターV12
  • 12,100rpmで700ps超を発揮
  • 極限まで軽量化されたパーツ構成(Tiコンロッド、SiCピストンなど)
  • 世界最軽量・最高回転領域を誇る新世代NAエンジン

究極の軽量化とアート的造形

  • 目標車重は957kg
  • ボディ外板は0.6mmの超薄型カーボンファイバー
  • 18Kゴールドの遮熱シールドを備えるインコネル製エキゾースト
  • 削り出しの金属コンポーネントや3Dプリント構造体によるアートピースのような機構美

徹底したアナログ主義

  • 専用設計の6速マニュアル
  • センターシートレイアウトによる完璧な視界
  • サスペンションや空力セッティングはオーナーの好みに調整可能

空力と造形の調和——S1 LMデザインの核心

S1 LMは、T.50をベースとしながらも、構造・造形・空力のすべてを再設計した完全な新モデルである。ルーフを低くした新モノコックや、CFD解析に基づく彫刻的なコークボトル造形により、F1 LMの精神を継承しつつ現代的な美しさへと昇華している。

GMAとして初のクレイモデリングを採用し、デザイナーが手作業で曲線を仕上げた点も特筆すべきポイントだ。

落札者は後日、風洞実験にも立ち会う権利を得ており、オーナーだけが知り得る最終開発プロセスを体験できる。


所有は旅の始まり——唯一無二のカスタマー・ジャーニー

S1 LMの購入は車の入手ではなく、ゴードン・マレーとともに1台を“創造”する旅のスタートである。

オーナーは以下の特別な機会を得る:

  • マレー教授およびDario Franchittiとの共同開発
  • 最終プロトタイプのテスト走行へ同行
  • オーナー専用500ページのモノグラフ(オリジナルスケッチ付き)
  • 将来のGMA/GMSVモデルへの優先購入権

S1 LMは、アート、エンジニアリング、そしてエモーションが融合した「走る彫刻」と呼ぶべき存在である。5台のみという極端な希少性に加え、オーナー自身が開発へ深く関与するという体験は、現代のスーパーカー市場において他に類を見ない。


未来へと継承される“特別な1台”

ゴードン・マレー S1 LMは、F1 LMの精神を受け継ぎながら、現代の技術と美学を極限まで凝縮した存在である。今回のオークション結果は、その価値を世界が認めた証であり、オーナーにとっては唯一無二の旅の始まりである。

この1台は、過去への敬意、現在の頂点、そして未来の象徴として、スーパーカー史に新たな伝説を刻むだろう。