限定446台のみ生産された「メルセデス・ベンツ 500 GE V8 (1993)」

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1993年、メルセデス・ベンツGクラスに初めてV型8気筒エンジンを搭載した特別仕様車「500 GE V8」を発表した。生産台数は世界でわずか446台、日本国内向けは50台のみと極めて希少であり、現在ではコレクターズアイテムとして非常に高い人気を誇る。

高級オフローダーの先駆け

500 GE V8は、軍用車両ベースの無骨なイメージが強かったGクラスに、新たな方向性を示したモデルである。パワフルなV8エンジンと豪華な装備を組み合わせることで、「自家用高級オフロードモデル」という新たなカテゴリーを開拓した。この流れは現在のGクラスにも受け継がれ、ベースモデルからAMG仕様まで、ハイパワーエンジンを搭載することが当たり前となっている。

AMG協力による5.0リッターV8エンジン

心臓部には、AMGの協力を得て開発された「M117」型 5.0リッターV型8気筒SOHCエンジンを搭載。最高出力243PS(177kW)、最大トルク375Nmを発揮し、最高速度は180km/h、0-100km/h加速は11.4秒を記録した。当時のオフローダーとしては驚異的なパフォーマンスであり、それに合わせてABS付きブレーキやベンチレーテッドディスクも採用された。

限定生産となった理由

このモデルが446台にとどまった背景には、搭載されたM117エンジンの事情がある。当時、メルセデスの主力エンジンは新世代の4バルブ「M119」へ移行していたが、サイズの問題でGクラスには収まらず、またM117も大量生産には向かなかったため、限定生産という形を取らざるを得なかった。

贅沢なインテリア

インテリアはブラックレザーとミディアムグレーのトリミングを組み合わせ、ウォルナット・ベニアをアクセントに用いた豪華な仕立てとなっている。シートヒーターやクルーズコントロール、エアコン、サンルーフなど快適装備も充実し、価格は当時178,250マルクと、直列6気筒モデルG 320の約2倍に設定された。

歴史的文化財としての価値

2023年にはドイツにおいて歴史的文化財に指定され、コンディションを満たした車両は「H(Historisch)」ナンバーを取得できるようになった。500 GE V8は、単なる限定車ではなく、Gクラスの歴史を大きく転換させたエポックメイキングな存在であると言えるだろう。