1991年製 ランチア・デルタHFインテグラーレ・エボルツィオーネ、希少なホモロゲーションモデルが落札 | 1991 Lancia Delta HF Integrale Evoluzione

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Courtesy RM Sotheby’s

2025年8月15〜16日にモントレーで開催されたRMサザビーズのオークションにおいて、1991年製「ランチア・デルタHFインテグラーレ・エボルツィオーネ」が173,600ドルで落札された。本車両は、単なる名車ではなく、世界的に希少な“タイムカプセル”と称すべき個体である。

ホモロゲーションのために生まれたエボルツィオーネ

1991年、ランチアはグループA規定に適合させるため「デルタHFインテグラーレ・エボルツィオーネ」を投入した。ワイドトレッド化や拡幅フェンダー、ボンネットベント、大型グリル、リアスポイラーといったエアロダイナミクス改良に加え、強化ブレーキ(対向2ピストンキャリパー)、補強されたサスペンション、フロントストラットタワーバー、大径ステアリングボックスなどが採用された。
エンジンは2.0リッター直列4気筒ターボをリマップし、最高出力210psを発揮。デルタ史上初めてリッターあたり100馬力を突破したのである。

30年以上家族のもとで保管された奇跡の個体

本車両は1991年12月、イタリアのテルニにあるディーラー「Auto 2000」で新車納車された。当時のオーナーは保護フィルムやスポンジを外さないよう強く依頼し、ダッシュボードには「セロファンを剥がすな。洗車するな。エンジンルーム内のスポンジを外すな」と赤い口紅で書かれた指示が残されている。
サン・ジェミニ在住の初代オーナーの家族のもとで30年以上保管され、現在の走行距離はわずか6,550km。内外装ともに新車当時の状態を色濃く残す未再生オリジナル車である。

希少装備と“本物”のホモロゲーション仕様

ボディカラーはホワイト、内装はグリーンのパーフォレーテッド・アルカンターラ。レカロシート、ボッシュ製ABS、クラリオン製ヘッドユニット、エアコン、分割式リアシートなど、当時としては非常に贅沢な装備を備える。サンルーフレス仕様で、より走行性能に重点が置かれている点も特徴的だ。
さらに、この個体はわずか200台とされる「真のホモロゲーション仕様」であり、ターボインタークーラーを冷却するための特別なウォーターバッグが装着されている。多くの車両では切り離されていたが、本車両では当時のまま作動状態を維持し、ホース類には1991年製造の刻印が残されている。

タイムカプセルとしての存在価値

車両には1991年当時のタイヤが装着されたままで、工場出荷時のマークや保護用プラスチックも残されている。さらに、オリジナルの書類やアクセサリーも完備しており、コレクターズアイテムとして極めて高い価値を持つ。
デルタHFインテグラーレ・エボルツィオーネは、20世紀末のラリーホモロゲーションカーを象徴する存在であり、アナログなドライビング体験と卓越したバランスを提供する。この希少な一台は、そのオリジナリティ、低走行距離、特異なバックストーリーを備えた、まさに至高のコレクターズカーである。

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