1996年式 日産スカイライン GT-R NISMO 400R (R33型) ― グランツーリスモが生んだ伝説の400馬力

言語切り替え

Courtesy RM Sotheby’s

1990年代の日本車を象徴する名車の中でも、Nissan Skyline GT-R NISMO 400R(R33型)は特別な存在である。
1996年にわずか44台のみが生産
されたこのモデルは、ル・マン24時間耐久レースへの挑戦を記念して誕生した究極のGT-Rであり、いまや世界中のコレクターが熱望する“神話的”存在となっている。

NISMOが手掛けた400Rは、当時の自主規制である280PSの枠を超え、専用開発のRB-X GT2エンジンによって400PSを発生する。2.8リッター化された直列6気筒ツインターボは、グループAで圧倒的な強さを誇ったR32型「ゴジラ」の血統を受け継ぎつつ、さらなる高みに到達した。
このエンジンは、ル・マン参戦車ではなく、全日本GT選手権(現・SUPER GT)を戦ったプライベートチーム車両の設計思想を基に開発されたという。

軽量なカーボン製ボンネットやリアウイング、チタン製ストラットタワーバーを採用し、足回りにはビルシュタイン製ダンパー30mmローダウン仕様を装備。さらに、LM GT1由来の18インチ3ピースホイールが装着され、その姿はサーキットとストリートの境界を曖昧にする。

しかし、バブル崩壊後の経済不況という時代背景の中、400Rは標準GT-Rの約3倍の価格で販売されたこともあり、生産台数はわずか44台にとどまった。その希少性ゆえ、オリジナルのPlayStation用ゲーム『グランツーリスモ』でデジタル上の伝説となり、11万台以上のバーチャルガレージに収まったことでも知られている。

2025年8月、RMサザビーズ・モントレー・オークションにおいて、走行距離7,093kmの400Rが99万5,000ドル(約1億5,000万円)で落札された。この価格は、スカイラインGT-Rの歴史的価値を象徴するものであり、400Rが今もなお世界中の愛好家を魅了し続けている証左である。

NISMO 400Rは、単なる限定車ではない。
それは日本のエンジニアリングと情熱が融合した「走る芸術品」であり、GT-Rの血統におけるひとつの到達点なのだ。