Alfa Romeo Disco Volante by Touring Superleggera (2018)

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Courtesy RM Sotheby’s

戦前の黄金期に隆盛を極めたコーチビルディング(注文車製作)は、21世紀に入り再評価されている。ピニンファリーナ、ザガート、イタルデザイン、そしてカルロッツェリア・ツーリングといった名門が、かつての伝統を守りながら、現代に新たな命を吹き込んでいる。

その代表格が「アルファロメオ・ディスコ・ヴォランテ・バイ・ツーリング」だ。1952年に登場した初代ディスコ・ヴォランテは、モノコック構造を持つ先進的なシャシーを採用し、1900スプリントのエンジンによって735kgの軽量ボディを最高速度220km/h超で駆け抜けた。製作台数はわずか5台で、すべてがスパイダーとして作られ、うち1台のみがクーペとして再ボディ化された。

ツーリングはこの伝説的なデザインを、アルファロメオが誇る現代の名車「8Cコンペティツィオーネ」をベースに再構築。2012年のジュネーブ・モーターショーで発表されるや否や世界中から絶賛を浴びた。手作業によって成形されたアルミボディ、レザーとカーボンを贅沢に使ったインテリア、そして1台ごとに異なる仕様を持つ限定生産。生産台数は10台未満とされ、まさに一点物の芸術品である。

ここで紹介する「C52スペシャルエディション」は、2018年に完成した特別仕様車だ。走行距離6,300kmの8Cコンペティツィオーネをドナー車とし、1952年のオリジナルに敬意を表したロッソ塗装、当時のアルファロメオのエンブレム、グリルにクロスモチーフ、手描きのクアドリフォリオ、マットカーボンのアクセント、リアウィンドウを覆うブラックカバーなど、細部まで徹底した意匠が施されている。

インテリアには黒革と赤の差し色を用い、ステアリングホイールはあえてブラウンレザーで仕立て、往年のウッドステアリングを彷彿とさせる。見た目だけでなく、オーナーはこの車を実際に走らせており、完成後には約5,200km、累計で1万1,600km弱を走行している。

2018年には「コンコルソ・デレガンツァ京都」に出展され、同年には「ガムボール3000」の日本ステージにも参加。大阪から京都、そして東京までの道のりを駆け抜け、多くの観衆を魅了した。

アルファロメオ・ディスコ・ヴォランテ・バイ・ツーリングは、過去と現代の技術、芸術性を融合させた存在だ。工芸品のようなボディ、唯一無二のスタイル、そして圧倒的な存在感。21世紀を象徴するコーチビルドカーのひとつとして、その名は永く語り継がれることになるだろう。


この車両はRM Sotheby’s Private Salesにて販売される。