TFC1: The Bobber & TFC2: The Scrambler – Triumph Factory Custom

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Triumph Factory Custom

TFC(トライアンフ・ファクトリー・カスタム)とは、Triumph Motorcyclesの限定生産 プレミアム・ファクトリー・カスタムモデル。
カスタムシーンを強く意識し、トライアンフがメーカー自らその頂点を目指すべく、パフォーマンス、装備、テクノロジーにこだわり、新たなアプローチで設計・製造に取り組んで誕生したのが、このスペシャルなカスタムモデル「TFC」。ハンドクラフトから生まれるカスタムデザイン、向上したパフォーマンス、クラストップのテクノロジー、革新的なエンジニアリング、ハイスペックな装備、これらによって、何かの模倣ではなく、オリジナリティに溢れ、精緻に造り込まれているのがTFCの特徴。

試作車

2014年、英国のヒンクレー本社にて、カスタマイズを愛するデザイナーとエンジニアらが一丸となり、Triumphらしい究極のカスタムビルドというビジョンの実現に向けてカスタムプロジェクトが動き出した。デザイナーとエンジニアは2つのチームに分かれ、それぞれのチームは、クラフトマンシップ、スキルや情熱を注いで精巧にデザインとエンジニアリングを行い、試作車を完成させた。

2台の試作車は、カスタムベースとして多くのトップクラスカスタムビルダーに選ばれてきたBonneville をベースに、BobberスタイルとScramblerスタイルで製作され、それぞれTFC1、TFC2と名付けられた。

TFC1: The Bobber

チームが目指したのは、Bobberの精神を取り入れてそれを限界まで押し進める、そしてTriumphの伝統を受け継ぎつつ、現代の走りを存分に味わうことのできる Bonneville。

ハンドルバーから調節できるツインの Fox製ファクトリーショックは現代的な構成のフロントエンドを形成し、完全に再設計された太いフォークにより、この種のデザインでありがちな取り回しの悪さやダンピング不足を克服。4 ポットキャリパーとワイヤホイールにはモダンなデザインとクラシックなスタイルの見事な融合が見て取れる。片持ち式のリアエンドと鋼管ツインハードテイルフレームは優れたエンジニアリング技術を示しており、リバースシリンダーエンジンには吸入空気を受け入れる独自のベル 型吸入口が覗き、そこからシンプルでエレガントなエグゾーストが伸びてリアラインを形作る。

エンジンの中は、カムチェーンテンショナーとオイルポートの位置、オイル通路が変更され、反対方向に 回転するカムシャフトのカムタイミングも変わっている。エグゾーストパイプは、ブラシ仕上げの表面が熱によって変色しないよう二壁構造になっている。

フレーム要素の接合部には、パートナーのひとつであるThreeBondによる特別な接着剤が用いられ、溶接不要でクリーンな仕上げで類を見ない美しさを見せる。伝統的なシングルシートは Fox製ショックアブソーバーとリンケージを考慮した設計になっており、ライダーはレバー操作で簡単に座り心地を調節可能。シートパンに組み込まれた Radianz 製LEDの控えめなラインにも、このチームによる細部へのこだわりが感じられる。

その他、現代のモーターサイクルは数多くの電子機器やセンサー、機構類を組み込まなければならず、Bobber製作においても、現代における究極の Bonnevilleを作りたいという考えからチームはモダンな電子装備をすべて組み込んだ。69年式米国輸出用Bonnieのタンクを採用し、2分割式のこのタンクの片側を電子機器類のスペースとして利用し、もう片側に燃料を入れるという形式とした。このダミーの側に「Start」と「Kill」が追加され、さらには長さを短縮した機器類や特注の電子基板、Motogadget製スピードメーターなどが取り付けられ、エンジン始動にはMotogadgetのキーレスイグニッションが採用された。タンクの反対側には燃料が入り、そこには燃料インジェクションポンプやフィルターも取り付けられ、ポップアップ式燃料キャップが付けられている。

TFC2: The Scrambler

高性能かつハンドリング が優れ、オフロードをこなせる理想のモダンバイクを表現することが Scramblerに対するチームの解釈であり、チームのメンバーはプロジェクトを成功させるためのテーマとして「軽量化しつつパワーを上げる」ことを設計の基本的考え方とした。

このアプローチには、ジオメトリーとサスペンション移動量を現代の競技用モトクロッサーのそれに近いものにすることが含まれ、出力を増したパワープラントに合った速いシャーシが求められた。まず手をつけられたのが 元のスチールフレームで、アグレッシブなジオメトリーとねらいを絞ったスタンスをもたせた特注のアルミニウムとチタニウムを使ったシャシーに換えられた。アルミニウム製のフレームは、スロットルリンケージやケーブルなどの補機類を隠す管路としての役割も担う。アルミニウム製フレームには繊細なチタニウム製サブフレームが取り付けられ、ショットブラストとマスク溶接で仕上げられる前に手作業で溶接されている。

軽量化というねらいからは少し相反するものの、ベアシャシーは美しく仕上げられた。Speed Tripleから流用したスイングアームは元々のユニットより重いものの、裏返しにされ、Triumph 独特の意匠を加えて仕上げられている。 このスイングアームの組み付けでモノショックへの変更が必要になった結果、 このバイクは現代のモトクロスを思わせるようになり、専用のフロントフォークと合わせて入念な調整がされた Nitron Racing Systemsによるリアショックが備えられた。

もともとエレガントさとアグレッシブを併せ持っていたScramblerがさらに複合的なボディワークで個性的な仕上がりとなった。チームは製作の極めて早い段階からカーボン燃料タンクを使う可能性を考え、その他のボディワークやバッテリートレイと合わせて、Ace Fibreglass Ltdと共同でフルカー ボン製タンクの製作に取り掛かった。タンク自体の重量はオリジナルの鉄製の3 分の1以下であり、チームのねらいであった重量を軽減しつつパワーを上げることに大きな貢献を果たした。

Scrambler軽量化の目処が立ち、チームは次の目標であるパワーを上げることに着手した。大型バルブ、Daytonaのスロットルボディを取り付ける前にシリンダーヘッドは面研され、 ポートが研磨され、アルミ削り出しのインレット・トランペットが取り付けられた。また、彼らがモディファイを施したツインから流用する形で、Daytona のプロファイルをもつハイリフトカムを手作りした。これらエンジンに対する一連の改造により、パワーは25%増しになると想定された。

17インチKineoホイールには180セクションのリアタイヤと120セクションのフロントタイヤが装着された。また、この究極のScramblerに超ハイグリップのスリックを前後に履かせて、究極のスーパーモトスタイルのトラッカーにすることも見据えていたため、フロントホイールは17インチが選択された。

TFC市販モデル

2019年に第一弾としてTHRUXTON TFCが発表され、その後ROCKET 3 TFC、BOBBER TFCがそれぞれ750台限定車両として発表された。