マセラティは、ブランドの本拠地モデナにおいて、グラントゥーリズモおよびグランカブリオの生産再開という歴史的転換点を迎えた。本プロジェクト「Maserati Meccanica Lirica」は、モーターバレーの象徴であるメカニズムと、街の文化的基盤であるオペラを融合し、マセラティが持つ美学・音・クラフツマンシップを新たな次元へ昇華する取り組みである。
Meccanica Lirica:モデナが奏でる機械と音の調和
2025年11月5〜9日にかけて、モデナではマセラティを祝福する数々のイベントが開催された。象徴的な会場である「テアトロ・コムナーレ・モデナ パヴァロッティ=フレーニ」では、「グラントゥーリズモ メッカニカ・リリカ ワンオフ」と「グランカブリオ メッカニカ・リリカ ワンオフ」が世界初公開された。
オペラ「トゥーランドット」や、ソヌス・ファベールとのコラボレーションを通じて、マセラティは“音”というブランドDNAを芸術として再解釈。エンジンサウンド、デザイン、照明演出が調和し、まるで一つの舞台作品のような世界観を構築した。
2台のワンオフモデル:モデナの劇場を体現する特別仕様
ワンオフとして製作された2台は、マセラティのカスタマイズ部門「Officine Fuoriserie」による頂点のクラフトマンシップを象徴する。
- グラントゥーリズモ:Rosso Velluto(ロッソ・ヴェルート)
劇場の赤いベルベットから着想した多層塗装。光によって深紅から黒へと表情を変える。 - グランカブリオ:Oro Lirico(オーロ・リリコ)
シャンパンゴールドに赤の光を忍ばせた特別色。オペラの優雅な余韻を想起させる。
両モデルには、特別開発のメッカニカ・リリカ専用エキゾーストが搭載され、音色の響きまでもが美しく設計されている。
インテリアではバーガンディのレザーとヌード・アルカンターラを組み合わせ、劇場の温かみと現代的な素材感を融合。ポプラ材のレッドウッド仕上げなど、イタリア伝統の楽器製作へのオマージュも込められた。
Meccanica Lirica Pack:全モデルに広がる特別仕様
このワンオフでの世界観を量産モデルに落とし込んだ「Maserati Meccanica Lirica Pack」も登場。特別ホイール、エキゾーストフィニッシャー、専用内装カラー、ホワイトゴールドのトライデントなど、マセラティらしい品格を強調するカスタマイズパッケージとして提供される。
モデナとマセラティ:90年続く“原点”の再確認
モデナは1939年以来、マセラティの精神が宿る街であり、技術・文化・情熱が混ざり合う特別な場所である。今回の生産回帰は、単なる工場移転ではなく、
「ブランドの心臓部が再び鼓動を取り戻した」
という象徴的な意味を持つ。
新たな生産ライン、職人の技術継承、未来に向けた柔軟な製造体制—これらすべてが、モデナを“Città di Maserati(マセラティの街)”として次の時代へ押し上げている。
マセラティが見つけた「新しい声」
「Maserati Meccanica Lirica」は、単なる限定モデルやイベントではなく、
マセラティが再び自らの本質—美、音、クラフトマンシップ—を再定義した象徴
である。
モデナで機械は旋律を持ち、音楽は形を持つ。
ここでマセラティは、自らの“声”を取り戻した。



















